戯曲:「ライオンとねずみ」より
今回は、読み上げ練習用の教材として、イソップ物語から戯曲 「ライオンとねずみ」を引用してみます。
短い文章ですが、起承転結がはっきりしている作品です。
ネズミ
ある日ネズミは、昼寝をしているライオン
の足にぶつかってしまいました。
ライオン
ライオンは目を開け、邪魔されたことを怒りました。
ライオンはネズミをつかまえ、かみ殺そうとしました。
普通の戯曲ですとセリフのみが書かれていますが、この作品では登場人物のライオンとねずみ、それぞれの動きもセリフになっています。
動きを
説明する部分とセリフの部分で声のトーンを変えて読んでみましょう。
ネズミ
ネズミは「お願いです。邪魔しようと思っ
たのではないのです。
離してくだされば、このご恩は一生忘れません。いつかあなたのお力になれるかもしれません」と大声で言いました。
ライオン
これを聞いたライオンは面白がってネズ
ミをそのまま離してやりました。
ライオン
「おくびょうなネズミめ。大きくて強い
おれさまのお力になる?
これは面白い」ライオンは大声で笑いました。
「大声で」という表現が入っています。
ライオンのセリフの中に「大声で笑いました」という一文がありますが、大声で笑っているセリフがあり
ませんね。セリフの中に笑い声を入れてもいいですし、かぎ括弧のあとで笑い声を入れても十分伝わると思います。
ネズミ
それからしばらくして、ネズミは、ライオ
ンが大声でほえているのを聞きました。
ネズミが急いで行ってみると、ライオンが狩人のわなにかかっていました。
「心配しないでライオンさ
ん、すぐに自由にしてあげますから」
ネズミはライオンにそう言って、わなのロープをかみ切り始めました。
カリカリ、ガリガリ、ガリガリ、
カリカリ、プツン。
ライオン
ガオーッ ライオンは自由になりまし
た。
「ネズミ君、君の体は小さいが、君こそ僕の一番大切な友達だ」
とライオンがネズミに言いました。
「カリカリ、ガリガリ」という擬音はねずみが小さい歯で一生懸命噛み切ろうとしている様を表現しています。
「プツン」というのはロープが切
れた音です。なかなか切れずに必死になっている様子から、ようやくプツンと切れる所まで、実はここがこの作品の一番のヤマになっています。
その証拠に、ライオンはその後改心して「君こそ僕の一番大切な友達だ」と感謝の気持ちを述べています。「ガオーッ」という吠える声はようやく自由に なれた喜びや嬉しさを表現しています。
戯曲は恥ずかしさを捨てて、堂々と感情移入して読むことが大切です。ライオンとねずみという対のキャラクターの利点を生かして、それぞれの良さを引 き出して読んでみましょう。
(管理人へのご連絡は不要です)